あやめ
「なぁ、あやめ」


「何?」


吹き込んだ風を気持ち良さそうに受けながら、あやめが返事をする。


「女なんだから、もう喧嘩なんかするなよ」


そう言うと、あやめは目を丸くした後、思い切り顔をしかめて見せた。


「うっせーよ、バーカ」


そして、すぐにおかしそうに笑った。


相変わらず喧嘩ばかりで、乱暴で、気が強くて、愛想の悪いあやめだけど、ほんの少しずつ、笑顔が増えてきたように思う。


笑ったあやめはとても綺麗だ。


彼女が本当の笑顔を取り戻すために、僕はあやめを支えていきたいと思う。


僕に何ができるかわからないけれど、できる限り手助けをしていきたい。


そう強く思ったんだ。

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