あやめ



耳を澄ましてみると、複数の女子のわめき声が徐々に近付いてくるのがわかった。


その方向に目をやると、


「あっ…!」


校舎の影から一人の女子が飛び出してきた。


後ろを気にしているところを見ると、「待てコラァ」の対象は、どうやら彼女らしい。


彼女はこちらの方向へ走り出す。


かと思った次の瞬間、よろめいて膝をかばった。


巧はほとんど反射的に、彼女に駆け寄った。


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