あやめ



突然現れた人影に、当然彼女は驚いて後ずさった。


しかしすぐに、鋭い視線で巧をにらみつける。


「…んだよっ。どけ!」


その迫力に、思わずすくみ上がる。


(……嘘だろ)


彼女は巧を突き飛ばして、痛みをこらえるように顔を歪めながらも足を進めた。


しかし、


「どこ行った山崎ぃ!!」


すぐそばで声がして、追手がすぐそこまで近付いているのがわかる。


彼女は悔しそうに唇を噛んだ。


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