あやめ



しかし彼女は勢い良く顔を上げて、怒りをたっぷり込めて叫んだ。


「んなわけあるかよ!ただのケンカだ!!」


(怖っ!)


すっかりひるんでしまった巧をよそに、彼女は苛立たしげに髪をかき上げる。


きっと本当は綺麗な茶色の髪が、ボサボサになって所々からまっている。


その時、


「あ……」


突如として目に飛び込んできた光景に、巧の心臓が縮み上がる。


それは彼女の首筋の、あざ、だった。


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