あやめ



「それ……」


巧が指を向けると、彼女は慌てて首を隠した。


気まずそうに、目を泳がせる。


それは、巧の予想が一部当たっていることを意味していた。


はっきりしていない方を確かめるために、言葉少なく問いかける。


「さっきの人達が、原因で…?」


けれど彼女は、さっきよりも大きな声で、きっぱりと否定した。


「んなわけあるかよ!!あんなヤツらのために死んでたまるか!」


その目は決して、嘘をついていなかった。


彼女は立ち上がり、


「なめるな!」


そう言い捨てて、足をかばいながら去っていった。


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