あやめ



売店の勝手がよくわからないので、とりあえずクラスメイトについて行くことにしたのだが、人の流れに飲まれそうだ。


もたもたと彼の背中を追っていると、


「うぁっ」


体に鈍い衝撃が走り、後ろによろめいた。


どうやら、人の流れに逆らって歩いていた誰かとぶつかったらしい。


「ってーな!どこ見て歩いてんだよ!!」


突然の怒声は、またしても、女子のものだ。


(なんだよ、廊下は右側通行で、僕はちゃんと右側を歩いていたのに)


巧は心の中で非難しながらも、


「ご、ごめん」


あまりの剣幕に物怖じして、思わず謝ってしまう。


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