honey*bitter~赤い車の秘密



着くまでに、案の定寝てしまったちぃ。

俺の上着をぎゅっと抱きしめて深い眠りについていた。



疲れたよな?


起きたらびっくりするかな?


なんて思いを抱きながら、車から降りて、助手席のドアをそっと開けた。


「ちーい、起きろ」



とぼけた顔で数秒固まって、
なんだかわからないような表情をしながらとりあえず車から降りた。


思い出してくれればいい。


ここはどこで、



「待って、ゆーすけ…」


「ん?」



「海…?」


浜辺に近づくと、
漁船なんかの光でうすく、静かにきらきらと光る海。



日付が変わったこの瞬間。
今日はなんの日か、



「1ヵ月おめでとー♪」



なんて軽く言ってみせたけど。


22にもなる男が、夜中に車飛ばして記念日に合わせて海って。

笑ってもいいよ。

俺、こんなことしたことないからね?


目をまんまるくして俺を見つめるその顔は、一体何を語ってるのか俺にはさっぱりなんだけど。






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