honey*bitter~赤い車の秘密
「早くても一時間ちょいはかかるぞ?」
珍しく寝る気配のないちいにそう言った。
「うん、いい♪」
窓を開けて外の景色を見ながら、
耳障りのいい鼻歌を奏でていた。
「~~♪」
あ、CMでかかってるやつ。
「~~♪~~♪♪」
これは、最近のドラマのだ。
なんて頭ん中で勝手に回答。
「~~♪ーーー」
ん?これなんだってけ。
小学生の時聞いたような
優しいメロディーだった。
「なーちいそれなんの歌?」
「へ?」
不意をつかれて間の抜けた顔のちい。
「今のー?ちょっと待って、
もーそんなの聴いてないでよーう」
「はは、ごめん気になった」
そう、言われて思った。
今までこんなに彼女のことなんて
気にしてただろうか?
ふとした瞬間に口ずさむ歌も、
ガキみたいにアイスを食べる顔も、
泣いた時の赤い顔も、
ひとつ ひとつが愛しくて
一瞬 一瞬が眩しい
この年じゃ恥ずかしい言葉になるけど
恋を、してる気がした。
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