ヴァンパイア様と猫

や、あたしにはさっぱり分かんないけど。


「えー…イチ、オレより先に美依の血もらってたのかよ…」


ため息混じりにそう言った匙月だが…あたしにとっては聞き間違えではないのか?という言葉が聞こえた。


匙月…血もらってたのかよ…って言った?


てことは何、もしかしなくても匙月も………?


そんな考えが頭の中を掠める。


ま、まさかねー…。




今さっきの会話は聞かなかったことにして再び腰を下ろした。


お気に入りの木に寄り掛かり雲一つない快晴の空を見上げた。


嗚呼…今日も空が青いなぁ…。


なんて黄昏れていると…両隣に人の温もりが。


チラッと視線だけを動かして確認すると依智と匙月。


まぁ…何となく分かってたけど。


何も言わず、空を見上げていると右隣りから制服の裾を引っ張られた。


右隣りは依智。


疑問を浮かべながら依智の方に向けば口を開いてこう言った。


「まだ、足りない」


それはつまり、食事─血─を意味しているのであって、たしかに今さっきの量だと少ないかな、とも思ったけど匙月がいるここでそれを言っちゃうのか。





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