ヴァンパイア様と猫

もう呆れるを通り越して開いた口が塞がらない、といったほうが正しいかもしれない。


いまだに受話器を耳に当てているあたしには虚しい機械音のみが聞こえて来るのだった。


あたしの指を口に含んでいた匙月はどうやら丸聞こえだったらしくなんとも言えない表情をしていた。


そして徐(おもむろ)に口を開いたかと思うと言った言葉は衝撃の事実だった。




「あ、俺今日からここにお世話になります」


この発言によりしばらくの沈黙のあと口を開いたのは


「「……………はぁ!?!?!?」」


あたしと依智だったのだ。


しかも何故か息ピッタリというオプションつき。


嬉々とした態度であたしから離れて満面の笑みを浮かべながら


「これからよろしく。 特に美依、な」


と言った。




どこにいるのかすらも分からないお父さん、お母さん。


あたしの身は保障されているのでしょうか?


それに何故こんな危険すぎる下宿人なのでしょうか?


ヴァンパイアに猫。


普通にはない事実ばかりが連なっている。


有り得ない状況に頭が痛くなる美依であった。





.

< 104 / 144 >

この作品をシェア

pagetop