ヴァンパイア様と猫

さすがに悪かったかな…と思うけど………いや、でもあんなとこであたしが血祭りにあうようなことを言おうとした匙月も………。


しかめっつらをして、しかも頭を抱えて唸っているとあたしの体が左に傾いた。


「ふぇ?」


だんだんと横向きになっていく景色。


いや、景色が横向きになっていっているのではなくあたし自身が横向きになっていっているのだ。


そしてたどり着いたのは固めの芝生の地面…ではなくあたしの左隣に座っていた依智の太股の上。




「えぇぇぇえええ!?!?!?」


数秒の沈黙のあとにこの大きな叫び声。


今はHR中だということも忘れ去っていた。


念のために言っておきますがあたし自ら依智の太股の上に寝転んだ訳ではありませんよ?


何処を引っ張られたのかはあまりの驚愕の事実に忘れたけど確実に依智に引っ張られてこうなった訳です。


慌てて上を向くとニッコリと笑顔であたしを見下ろしていた依智。


…この笑顔がくせ者なんだよなぁ、依智って。


こんな状況におかれながらも呑気にそんなことを思うあたしは危機感がないのだろう…。





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