ヴァンパイア様と猫

店内に足を踏み入れて、前来たときと何かが違うように感じた。


何が違うのかと見回してみると内装が少し夏らしくなっている。


そのことに納得しながら前座った席に座りアイスココアを頼んだ。


ボーッと視線を街に向けているとすぐ傍からカタン…という音が聞こえた。


意識をこちらに戻して横を見てみれば匙月が。




「…」


何の感情も篭ってない視線を向けてみれば嘘泣きをしだす匙月。


あたし、相席いいとも言ってないしね。


しかし嘘泣きされてるせいか周りからの視線が妙に突き刺さって痛い。


多分傍から見たら恋人の痴話喧嘩で匙月が別れたくなくて男泣き…てな感じなんだろうな。


気まずそうに店員があたしの頼んだアイスココアを運んできた。


「すみません、追加でアイスティーお願いします」


少し笑顔を向けてそう言えばその男性店員は顔を赤くしながら頷いてカウンターに戻っていった。


…この店、そんなに暑いかな?


よく分からない行動に首を傾げて匙月の方へ向くと今度はため息をついていた。


こいつ…何がしたいんだ。


そう思わずにはいられなかった。




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