ヴァンパイア様と猫
「落ち着くんなら自分の部屋で………」
落ち着いてくれませんか?と続けようとしたのだがそれは喉の奥へと消えたのだった。
なぜなら…
あたしがベッドの上に押し倒されて、その上に依智が乗っかっている…という状況。
え…ちょっ…非常に危険な状況なのでは!?
「ふにゃっ…」
首にかかる吐息に甘い痺れを感じて変な声が出てしまった。
すると依智がフッと笑った。
その時の笑顔は…とても妖艶なものだったが、あたしは見逃さなかった。
瞳の色が漆黒の黒から深紅の赤に変わったのを………。
容姿端麗で白い肌に黒の髪、そして深紅の瞳…。
昔…何かで聞いた話の中にいた人物のような?
………なんだったかな?
白…黒…そして、紅。
何かが引っ掛かってる。
「美依…すんげぇいい香り」
首筋に顔を近づけながらそんなことを言う依智。
…首筋?
容姿端麗、白い肌、漆黒の髪、そして…深紅の瞳にその言葉!!
聞いた話とも一致する。
もしかしなくても…依智って………
「ヴァンパイア…?」
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