ヴァンパイア様と猫
その言葉に今さっきまであたしの首筋辺りをモソモソしていた依智がピタッと止まった。
あ…これはもしかしなくても…。
「何現実離れしたこと言ってんの?」
頭大丈夫?という目で見られてしまった。
だけど…あたしはわずかに依智が動揺したのを見逃していない。
「………じゃあその眼は?」
スッと覗き込むと視線を泳がしだした依智。
漆黒の黒から深紅の紅に瞳が変わるなんて…尋常じゃない。
「…? 美依…もしかしなくても…」
んぬ?
首を傾げたと刹那、鈍い痛みが走った。
ツプッ…
聞き慣れない音と同時に体中に甘い痺れが走る。
「…ッ………ん…」
今まで感じたことのない甘い痛みに自分でも聞いたことのないような声が漏れた。
クラクラするほどの甘い空気に酔いしれていたがある言葉が引っ掛かって意識を取り戻した。
『もしかしなくても…』
意識がハッキリしたと同時に首筋に冷たい何かが埋められているような感覚。
………自分の言葉を思い出す。
『ヴァンパイア…?』
全てが…繋がった。
.