ヴァンパイア様と猫
携帯の画面をジーッと見ながら悩んでいると視界が薄暗くなったことに気づいた。
回りはまだオレンジ色に染まっているのに、だ。
首を傾げて後ろを見上げれば…
「依智…」
大魔王様が降臨していた。
とゆーことはだ。
あの着信にメールの数のほとんどは依智だろう。
依智の恐さに反射的に体を縮めると何か肩とかに違和感。
ふと自分の体を見下ろしてみると自分が来ているブレザーの上にもう一枚別のブレザーがかかっていた。
サイズからして男だと判断。
だっていくら女子が着るにしても大きすぎる。
しかも仄かに香ってくるのは男物の香水の香り。
………ってんん?
そのブレザーを持ち上げて顔にグッと近づける。
…あ、この香りって。
ブレザーをギュッと握りしめて再び顔を上に向けると微笑が浮かんでいる依智。
依智はブレザーを着ていない。
要するに、だ。
あたしが今握りしめているこのブレザーは依智のもの。
分かったこの事実に胸をキューッと締め付けられるが今のあたしにはこの気持ちが何なのか分からなかった。
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