ヴァンパイア様と猫

あたしの首筋から顔を離して、匙月に顔を向けながらそう言った依智。


ってちょっと依智さん!!


あなた口元から血がー!!


そんなあたしの心の声、もとい、叫びも虚しく、口元に血がついたまま振り向いてしまったのだった。


どーしましょー!?!?!?




「………ん? ってイチじゃねぇか」


「あれ、ツキ先輩、なんでここにいるんっすか」


……………はぁ?


え、何、この『二人とも知り合いでしかもむっちゃ仲良いんですよー』的な感じは。


しかもあたしを置いて話がかなり盛り上がっているようだ。


………チーン。


音で今のあたしを表すならこの効果音が1番だろう。


カヤの外にいるような気分に陥ったあたし。


はぁ…のの字でも書いていようかしら?


そんなへんてこりんな考えが浮かんでくる。


適当に座ろうとしたら聞こえてきた話題にあたしの身体が停止した。


「イチ…口元に血ぃついて…ってその血………」


ビクッとあたしの身体が小さく跳ねた。


「あぁ…そうだけど?」


匙月の言葉の続きが分かったのかそう答えた依智。





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