この素晴らしき異世界

 ドアを開けた先には、コンクリートの壁。

 それを埋め尽くすように書かれた、鮮やかな紫色の正の字。

 はしの方は掠れていて読めない。

 廊下らしきそこを歩いていくと、トイレがあった。お風呂も。

 そこには、大きな鏡があった。

 鏡にうつるのは、僕。

 髪が腰まで伸びた、やせ細った僕。

「ッ・・・!?」

 声にならない悲鳴。

 何がなんだかわからない。

 理解できない事柄に身体が拒否反応を起こして、胃液がこみ上げてきた。

 洗面台に、黄色い胃液を吐き出したとき。

「・・・カナン様ですか?」
「は・・・ぃ・・・?」
「俺はシオンといいます」

 洗面台の鏡、僕の後ろに移る人影は鮮やかな紫色した髪の少年だった。

 
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