病恋
ポニーテールにした、長い黒髪をいじくりながら、宿前の階段に腰掛ける。

温泉独特のにおいが、あたりに広がっていた。

しばらく、風景に溶け込んでいると、耳にかすかに入り込んできた音がある。

「母さん!チョット、そこら見てくるね!」

返事はなかったが、時雨は構わず階段を下りて宿をはなれた。


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