彼が猫になる
駅の商店街を抜けると

古風な家が並ぶ住宅地に入った

まだこんな町が残ってたんだ

ここ10年で

田んぼは道やアパートに変わっていった

でもここは

変わらず昔の雰囲気を残している

どこからか

甘い砂糖醤油の香ばしい匂い…

昔は隣の家のご飯が

漂っていたなぁ

懐かしいなあ

隣町の隣のはずなのに

全然知らなかった

あたしココ好きだなぁ

ふと目線の先に一匹の猫

長い手足に

白々とした毛並み

首輪は付いていないが

ちょっとイイとこの猫っぽかった

彼女は…

出で立ちが女の子っぽいから勝手に雌にした

こっちをチラっと見ると

顔を背け

吾が道を小走りで走っていく

「ちょっと待って」

あたしは何故か

彼女に道を尋ねたくなった

猫だもん

答える訳ないのに

なんでだろ

どうしても彼女が気になった

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