彼が猫になる
真っ直ぐにあの堤防についた

田舎だから

適当にバイクを止め

堤防に登る

今度はちゃんと階段で

今日は昼もありか

家族が散歩してる

犬を連れジョギングしてる人もいる

あたしは

辺りを見回すが

彼の姿は無い

ヒメっち??

違う

小汚い猫が顔を拭いている

「はぁぁ…」

こんなもんだよ

彼に会うつもりでいた分

あたしはどっと肩を落とし

腰も落として

ペタンと堤防に座り込んだ

焦点が合わない

でも相変わらず

川は流れている

日が当たり

キラキラ光っていた

赤い風船を持った

女の子が川の前で

キャッキャッしてる

あたしはレンズ越しに

彼女を見る

カシャ

カシャカシャ

川が優しく彼女を見ている

女の子の母も

ベンチに腰かけ

優しい目で見守っている

なんだか暖かい気持ちになる

あたしは

何度もシャッターを押した
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