彼が猫になる
「そろそろ
  戻ろうか」

時計を見ると六時

まだ明るいと思ってたけど

もうそんな時間なんだ

そだね

あたしは

砂を掃い車に乗り込んだ

帰りは行きと違い

ちょっと道が混んでて

家に戻るまで

まだかかりそうだ

車内は

洋楽から

邦楽に変わっていた

どれも選曲がいい

あたしは口ずさみながら

軽く眠りに落ちた

そっと外を見ると

もう夜に変わっていた

見慣れた町並み

もう戻って来たんだ…

ごめん 寝てた

「いーよ いーよ
  ウブ無駄に走ってたからなぁ」

茶化しながらも

言葉には優しさがこもってた

ありがとねー!

明るく返したら

「ちょっとは
  感謝しろよ」

あはは! 楽しそうな車内

ふと止まった赤信号

信号待ちをする人と猫

え…

あたしの顔は笑ったまんま

青に変わった信号を

通り過ぎた

あたしは思考が止まった

聞こえるはずない

笑い声が

彼に届いたんじゃないかって

ってか今のって一護…
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