彼が猫になる
『智 着信』

よりによって今か

断ろうって決めたけど

こんなにも早いものなの?

まぁいいや!

早かれ遅かれ

結果は決まっていたんだ

淑子先輩が出るよう促す

ちょっと…って

言いながら

あたしは席を離れた

「もしもし…」

あまりにも大袈裟に

暗い声が出てしまった

「うす!
  なんだぁ~元気ないなぁ!」

無理やりなハイテンション?

違う

いつもの智だ

あたしは病み上がりなんです

「うぶが
  風邪ひいたなんて
 明日は吹雪くなぁ」

まだ夏なんですけど

いつの間にか

いつもの会話

いつもの楽しい時間

断ろう 断ろうって

思ってるんだけど

智が違う話ばかりしてくる

何か逆に腹が立ってきた

あたしバカみたい

昨日今日とあんたの事で

必死に考えたのに!

いつもの智じゃんか。

何よ

あたしさ今先輩と呑んでて…

「…」

智?

無理やり切ろうとしたら

変な感じになった

唐突すぎた??

「違うんだ
    うぶ」

「俺…」

やっぱり海に行った帰りの話だ

うん。

急に落ち着いた携帯の声

あたしね?

「ぉ、おう」

嬉しかったよ

ホント

嘘でも嬉しかった

「俺は!

喋りかける智を遮り

(そうなんだよね? 本気で言ってくれたんだよね?

有難う智…)

このままが良いって

今感じたよ

こうやって

くだらない話を

智としてる時が幸せなんだって

あたしにとってはこれが

あたしと智の関係で

だからこの時間が好きで…

必死に説明しようと

でも言葉が見つからない

傷つけたくないけど

気持ちを受け入れないこと

伝えないと

だからね?

「うぶ。
  お前はホントバカだな!」

(ちゃんと聞いてよ

  今ちゃんと言うから)

「はっきり
   NO!って言うもんだぜ?」

違う違う

それはあたしの言葉じゃない

違うんだって…

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