彼が猫になる
神か

「あんたは
   今は不変の時期なんだよ」

「いいじゃないか 
    ちゃんと飯もくえる」

「着たい服だって着れる」

「親も安心してくれてるんじゃないか」

「もうちょっと
   笑って生きてかないと
  誰も寄りつかなくなるよ!」

「それとも一人で
    一生生きていきたいのかい!」



もう一人は嫌

一人の怖さを知った

何も面白く感じない

大好きな漫才も

うるさく感じる

テレビも似たり寄ったり

町を歩くカップルがうっとおしい

こんな考えした事なかったのに

手を繋ぐ

おじいちゃんとおばあちゃんを

見るだけで

幸せだったあの頃が懐かしい

「これだけは言っておくよ」

救いの手?

欲しい

こんな暗い自分みたくない

誰?

教えて

顔をあげると

目の前に聳える皺くちゃばばあ

誰だこいつ

縋る自分

いや

こいつの顔に呆れた

人の事言う前に

自分を鏡で見ろ

「運命なんて
    あってないものなんだ」

そうだ

占いババァだ

自分の世界に入ってて

すっかり占い中のこと忘れてた

「自分なんだよ
   全て自分なんだよ」

もう時間だ

「ありがとさーん」

仕事を終え

陽気になるお婆さん

商売だもんね

帰り道

特に何も得られなかった

でも

なんだか

どうでもよくなった

人生がどうでもよくなったんじゃない

悩みが

自分の暗さがどうでもよくなった

あんなにめちゃくちゃな事いって

人生儲けてる人もいる

投げやりかもしれない

でもなんか

晴れた気がした

そうだ

あたしが行く道が運命

それは簡単に潰せてしまう

後悔はしない

そうだ

智を振ったのにも意味がある

あたしには

どうしても消せない記憶がある

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