彼が猫になる
薫! 

あたしこの人に逢いたい

「うぶ、そんなに気に入ったんだ♪」

急にトーンをあげたあたしを

優しく見てくれた薫

やっと元気な姿を見せたからかもしれない

薫はちょっと待っててと

言い残し

この展示会の総責任者の元へと

走っていった

責任者は白い冊子を

ぺらぺらと見ている

ちょっとの間

薫と喋っていたが

上を指さす様子が見えた

上?

そうかこの公民館には屋上があった

きっとそこに!!

あたしは薫を待てず

非常階段をかけあがる

無駄に広い建物

二階にあがるだけで

息が上がる

違う

あたしが興奮しているんだ

早く早く

普段ろくに運動しない体が

悲鳴をあげる

こんな事なら鍛えとくんだった

と馬鹿な事を思いつつも

あたしは自然と笑っていたかもしれない

もう屋上への扉が見えた

普段はきつく施錠されていたんだろう

足元には立ち入り禁止の札が落ちていた

扉の前でふと立ち止まる

この扉を開けたら

きっと…

不安と期待

息が整うのを待てない

あたしはおもいきり扉を開く

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