彼が猫になる
「はぁぁぁ」

もぅ体中の水分全部泣いた

喉が渇くくらい泣いた

すっきりした。

ずっと長い間

細い腕でさすってくれた

初めて顔をあげて

お婆ちゃんをみる

「すぃません…。
  もぅ10年は泣かないようにします」

汚い顔だろうなぁ

でも誠意一杯にこってした

お婆ちゃんも笑ってくれた

ハンカチであたしの顔を拭きながら

「あんたも優しい子じゃね」

「ホント有難う御座いました」

「いいから。 いいから」

風が空気を一気に変える

もう外は暗がりかけていた

「あんたおうちは?」

電車で3時間って伝えたら

「ここ田舎で一時間しか
  電車走っとらんけん
    今日はお婆ちゃん家に泊まりんしゃい」

「ぇつ!
  そこまでお世話になれないです…」
「駅前のビジネスホテルにでも…」

何回かやりとりしたけど

結局お婆ちゃんにお世話になることに決めた

ゆっくりゆっくり

お婆ちゃんについていく。

今は家には一人で住んでるみたい

旦那さんは先にたたれて

子供や孫も遠くにいるみたい

これもちょっとした

暇つぶしになってくれたらいいけど…

こんなにも甘えちゃって

いいのかな。

なんて言うか

お婆ちゃんの雰囲気に

呑まれ、小さな子供みたくなる

凄く安心する。

「さぁ 着いたよ」

…なんていうか。

風情ある風景みたいに

佇ずみ一軒家。

瓦の屋根が光る昔ながらの平屋。

「…お世話になります」 
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