彼が猫になる
「飯の拵えするけん
  部屋であったまっとり」

有難う…。

手伝いますといいかけたけど

断られるだろうし

あたしきっと邪魔しかしない

フツフツ…

かつお出汁の匂い…

いいなぁ。

ふと目の先に映るフォトスタンド

ごめんっ見ちゃいますーー。

落ち着いてきて

いつもの調子が出てきたみたい

家族写真かな?

やだ。

若い頃のお婆ちゃん

…綺麗。

ありったけの笑顔

でもとても自然で

家族を愛してるって

この写真から分かる

旦那さんも格好いい

その格好のよさも畑仕事で?

日に焼け、たくましい体つきで

泥だらけで映ってる。

息子さんと娘さん?

娘さんの腕には小さな女の子を抱いてる

息子さんを引っ張る小学生くらい男の子

ホントいい家族なんだろうなぁ…。

「ご飯できたよーー」

大きな声が台所から響く

「はぁ~~ぃ」

本当の孫みたいに返事する

ん~いい匂い

醤油の甘い匂いが食欲をそそる

「遅くなってごめんね
    たんとおあがり」
全然。

めちゃくちゃ早く拵えてくれた

「いただきまーす」

久しぶりの母の味?

薄味で食べるのいつぶりだろう…

高菜の漬物をごま油で煮てある

「これっ 美味しい!」

ご飯をお代わりしたくなる

「ここらはね
  余った漬物を余らさんよう
   煮て食べるんよ」

なんて無い会話が弾む

仕事の話とか

あたしの過去とか

一切無しの。

アハハハハ…。

広い一軒家に響き渡る笑い声

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