彼が猫になる
「まだ若いらしいよーー
   あれ描いてんの」

「あたし見たことあるよ
   この間雑誌載ってたし」

「ちょー格好よかったよ」

「えーみたい~」

生の声を聞いて嬉しいはずなのに

あたしは

どんどん醜くなっていく

応援しなくちゃ

ねぇ。

喜ばなくちゃね?うぶ?

分かってたじゃない

一護の凄さをさ?

あんたが一番に知ってたんじゃない?

それで充分でしょ?

分かってる。

分かってる。

「ねぇねぇ
  今度の休みはいつとれるの~?」

「どうだろうなぁ~
   今描きかけがあって
  その次ももう決まってるからなぁ~」

「そっかぁ…」

「んん!?
  寂しいのかぁ??
  お~よしよし
   うぶちゃん俺に一筋だかんね」

あやされるあたし。

ぎゅっとされて安心するけど

バイバイってした後

寂しさで一杯な部屋。

さっきまで

明るかった部屋が

一気に冷たくなる。

遠いよ…。

一護。

あなたの才能に嫉妬するよ。。。

「ねぇ今度
  散歩でも行かない?」

「悪りぃ
  ちょっと立て込んでてさ~
 もうちっと頑張れば完成するからさ」

顔にも指にも服にも

油絵の具の香りを漂わせて

聞かなくても分かる

一護忙しいんだ

合間ぬってあたしに

逢いにきてくれてるのに

あたし我侭ばっかだ

…醜いなぁ

…重荷だょ私。

…邪魔だよ

…。
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