彼が猫になる
「トントン」

「トントントン」

ドアを叩く音…。

早く帰って…。

光る携帯。

「っぉっかしいなぁ」

一護の声

愛しい。

傍に言って抱きしめたい

寂しかったんだよって

離したくないよ

仕事しないで

あたしの傍に居てって

あたしだけの一護で居てって

死んでも言えない。

「トントン」

今はドア越しのこの振動でしか

一護に触れられない

…一護。

いちごぉ…。

階段を駆け下りる音がする

…ゎぁぁぁん。

いちごぉ…。

顔みたら

きっと言えない

優しいあなたは

無理してでも

あたしに会いにきてくれる

それがあたしには辛さでしか

ないんだよ。

ごめん。

おこちゃまなあたしを一人にして…。

一護が家にこなくなってから

早一ヶ月

なんてことないんだな

簡単に別れられるもんだ

長くても2週間に一度は

顔を見にきてくれたけど

あの日以来連絡も

家にも来てない

なんてことない。

「今回の作品は
   いつもと違いますね!」

TV越しに見る一護。

…はは。

すっかり有名人だなぁ。

凄いなぁ。



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