心の羽根
空は突き抜ける程の青空と真っ白な入道雲が気持ち良さそうに浮かんでいた。
夏祭りの時よりも更に歩く速度が遅くなった彼女に合わせて彼は手を繋いで歩いた。
二人が向かった先は…夏祭りの時の神社だった。
「行きたい場所ってここか?」
彼が意外そうに聞く。「違う違う、そこだよ」
彼女が笑顔で指差した先には神社の隅に石段があった。確かあの石段を登った先には小さな祠とちょっとした公園があったはずだ。
「あの石段を登るのか?」
コクッと彼女は頷く。石段の下まで来ると、意外にかなり段数があった。
「長いぞ…登れるのか?」
「あったり前ぢゃん!私いつも来てるんだから!」
彼女はそう答えると、一段ずつゆっくりではあるが、しっかりした足取りで登り始めた。
登りきった先には開けた高台に小さな公園があった。シーソーと鉄棒とブランコが二つとベンチが一つだけ置いてある…どこにでもある公園だった。夏の昼間なのに誰もいないことが寂しさを感じさせた。
「懐かしいなぁ…この公園、まだあったんだ」
子供の頃以来の彼は懐かしさのあまり立ち尽くして暫く眺めていた。記憶からほとんど消えていたのに、公園はあの頃と変わらず、静かに彼を迎えてくれた。
「こっちこっち!」
彼女を見ると、ブランコに座り、彼を笑顔で手招きしていた。彼は微笑むと隣のブランコに腰を降ろす。
「いつもここに来てるのか?」
「そうだよ」
彼女は幸せそうに笑うと、空を見上げた。
「ほら、見て!」
彼も空を見上げる。
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