心の羽根
今年の春、急に彼女から1ヶ月間くらい音沙汰が無くなった。それまでずっと電話やメールを欠かさずしてきたのに。
彼は最初の2、3日は何か理由があるのだろうと思っていたが、1週間も続くと気になっていてもたってもいられなくなった。何かあったに違いない。
彼女は生まれつき心臓が弱かった。学校の体育や運動会はいつも見学していたし、無理なことは出来なかった。そのこともあり、彼は狂った様に返事のないメールや電話を繰り返した。
桜もすっかり散って暖かさにも慣れて来た頃、彼女から突然メールが入った。
(ごめ~ん。最近色々忙しくてうっかり返事を忘れてたぁ~!ホントにごめんね)
彼はメールを見るとすぐに電話した。
「忙しかったって何だよ! 1ヶ月もの間返事無いなんてあり得ないだろ!」
「ごめん。色々あって。でももう大丈夫だから」 「色々って何なんだよ!」
「大したことじゃないから。ホントにごめんね。」
何を聞いても彼女は謝るばかりで答えてくれなかった。
それでも無事に彼女が今まで通り連絡をくれたことに安心し、彼はその後問い詰めたりはしなかった。
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