心の羽根
ホームで迎えてくれた彼女は去年から幾らか痩せて、顔色もあまり良くなかった。
それでも遠くから精一杯手を振る彼女は去年と何も変わらない満面の笑顔で彼を迎えてくれた。
「久しぶり!」
彼は彼女と真っ正面に向き合うと、笑顔で言った。上手く笑えてるだろうか…?
「おかえり!なぁんか、お洒落な格好しちゃって、すっかり都会人じゃない?」
「何言ってんだよ。お前も大人っぽくなったんじゃないか?」
彼女は照れ臭そうに顔を伏せると、
「まぁね。都会の人はもっと綺麗だろうけど…」
と呟いた。
その言葉を彼は微笑んで流した。今のは不自然だったろうか。
彼女は不意に顔を上げると、真顔になっていた。
「とにかくお帰り。私会いたかったよ」
そう言うと彼女はまた笑顔になった。
「…!」
彼は彼女を強く抱き締めた。蝉の声が二人を包んだ。
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