キミを待っている


「……雪城さん!!」

情報処理室の前にいた雪城ユカリを呼び止める。

「……藤沢さん?」

彼女は、普通の反応をしてくれた。

「雪城さん!」

雪城さんは、今日も部活に来てくれていた。

そうだ。

謝りたい。

「……ごめん!!」

でも、それだけじゃダメなんだ。

「ごめん!……僕、雪城さんの気持ち、何もわかっていなかった!!」

伝えたい。

「勝手なこと言って……ごめん!!」

ごめんとしか言えない自分が情けない。

「やめてください。……私、そんなに気にしていませんから」

「でも……!」

「藤沢さんは、ただ、何も知らなかっただけなんです」

何も知らなかった。

確かにそうだ。だけど、それは問題じゃない。

「僕は……何も知らないのに、知った口を聞いて」

僕は、自分の作ったものを罵られた事がある。
くやしかった。
くやしかった。
……くやしかった。

なのに、今、彼女にその感情を与えてしまった。

僕は、

「何にも知らなすぎたんだ……!」

僕のことを褒めてくれたから。
僕のことを尊敬してくれたから。

なのに、僕は……教えているだけだった。
雪城さんのこと、何も知ろうとしていなかった。
それで、いい気になっていたんだ。

「ごめん……」

気がついたら、頬に涙が伝っていた。

雪城さんが見たら、みっともなく見えるんだろうけど、止めようがない。

「僕は……」

声が変になるのを、必死で抑えて出た声は、相手に届いているかどうかわからないほど小さな声。


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