キミを待っている
「その、藤沢さん!」
彼女はまだ言い足りないらしい。
「いえ……ショウタさん。私のこと、名前で呼んでもらえませんか?」
正直、僕の名前を憶えていてくれたことに驚きだ。
僕も憶えているよ。
僕は、
「……ユカリさん」
彼女の名前を呼んだ。
「……はいっ!」
ユカリさんは耳まで真っ赤にしていた。
……こんなこと、バスの中でも恥ずかしいなあ。
結局、僕達二人は恥ずかしくなって、会話が続かなかった。
ただゆったりとした時間が流れて、僕達は充実していた。
そのままユカリさんの家まで着いてしまった。
さすがに何も言わずに帰るもんじゃない。
「それじゃあ、ユカリさん」
「はい、ありがとうございました。ショウタさん」
言って、お互い顔を赤くする。
他人の事言うみたいだけど、本当に初心だなあ、僕達は。