月の輪
「榊?」
顔を覗き込もうとしたら…。
「えっ?」
抱きしめられてる?視界いっぱいに榊の体が広がる。
「さっ、榊?」
放してくれ、と言おうとするしたが叶わなかった。
「…ん。」
「…。」
キス、してるの?唇に熱くって柔らかい感触がする。
「!?」
何か入ってくる!何、コレ?ぬるぬるしてる!舌?ウソ。やだ、いや!
「やめろ!!」
力任せに榊の体を押し返す。すると、意外にも榊はよろけた。その隙に体を離し、距離を置く。
「この無礼者!!!」
私は渾身の平手打ちをくらわせた。
「…っ。」
榊はそのまま走ってどこかに行ってしまった。知るものか、あんな卑猥な奴!


とは言え、時間が経つと罪悪感が沸いて来るから不思議だ。
「仕方ないな。」
蜜柑を寝かしつけたら探しに行くか。
「おねえちゃん…。」
「うん、眠ろうね。」
眠そうに目を擦りながら擦り寄ってくる蜜柑を抱き抱える。そのまま寝床に入って寝かせる。
「おねえちゃん。」
「大丈夫、ちゃんと居るよ。」
そうして寝かしつけている間に、私も眠ってしまった。


「はっ。」
目が覚めたら、もう日が登っていた。しまった。眠ってしまった。
「榊…。」
探しに行かなきゃ。
「榊っ。」



「くしゅんっ。」
さっ、寒みぃ…。くっそぅ。なんで雨降ってんだよ!とりあえず、雨の中帰るには遠いから手頃な木の上で野宿した。
「あぁあ。」
怒らせちまった。痛かったなぁ、平手打ち。
「やまねぇな、雨。」
そうか、冬になるのか。俺の所と同じだ。
「しゃあねぇ、行くか。」
雨だから、羽だせねぇし。歩いて行くか。
「はっくしゅんっ。」
ヤベー。風邪ひいたな、こりゃあ。
「いたっ!!」
急にでかい声が聞こえてビクッとした。この声…。
「貴様、どこをほっつき歩いているんだ!!」
「千歳?な、はっくしゅんっ。何で?」
「お前、風邪引いたのか!?まさか、一晩中外にいたんじゃないだろうな!?」
「そうだけど?くしゅんっ。」
「馬鹿者!!早く帰るぞ!着替えなくては!」
「いや、俺ン家じゃねぇから。」
「行くぞ!」
強引に腕を引かれる。あそこに行ったらまたヘンなことしちまうんじゃないのか!?千歳の怒り狂う顔が浮かぶ。
「やめろ、離せ!」
「榊?どうした?行くぞ?」
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