月の輪
「大きさは?」
襖の向こうの榊に問い掛ける。
「ちょーどいい。」
よかった。
「…おかしくねぇ?」
襖を開けて、榊が出て来た。
「特には…。」
ちゃんと、着れてるし大きさも大丈夫。
「何かヘンな感じ。人間の家で生活するなんて。」
そうか、そうだった。コイツ、ヒトじゃないんだ。
「そういえば、角だの羽だのは、どうした?」
初めて見たとき、さっきもあったのに。
「しまった。」
出し入れ出来るのか。
「髪の色とか目とかは変えられないけどな。」
髪は銀色、目は金色。真に妖しい。
「千歳様、榊様。ご飯の準備が整いました。」
「わかった、すぐ行く。」
榊をみると、驚いた顔をしている。
「スゲー…。榊様だって…。俺、初めて呼ばれた。」
「罷りなりにも、私の客という扱いだからな。」
「俺、いちおー、長男で、当主なんだけど、みんな俺のこと呼び捨てだぜ?」
コイツも当主なのか。そういえば、私は、コイツのことを何も知らない。
「千歳、メシ!メシ!行こう!俺、腹減った!」
無邪気に笑って見せるコイツは、子供っぽい。まったく…仕方ないな。
「わかったから、ちゃんと行くから!そう、急かすな。」
後で屋敷を案内してやるか。
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