月の輪
「私は、お前のことを何も知らない。だから、教えろ。」
悪気があって言ったんじゃないのは、わかる。それにしても、言葉が悪いなぁ。
「榊!」
「だぁから、内緒だって。」
別に、言ってもよかったんだけど、千歳に構ってもらえるのが嬉しくて、黙ってた。
「お前は、私を妻にすると言ったくせに、そんなことも言えないのか!?」
さすがにビックリした。千歳がそれを言うとは思わなかった。
「くしゅんっ!はっくしゅん!」
ヤベー、完全に風邪ひいたな。
「…布団敷いてやるから眠れ。」
「えっ。いいよ。自分でやるから。」
「病人にさせてなるものか、馬鹿者。」
そういうと、サッサと布団を敷いてしまった。
「お、俺、こんな上等な布団で寝たことねぇ。キンチョーする…。」
「はぁ?普通の布団だ。榊、早く寝ろ。私は、薬と氷を持って来る。」
テキパキしてらぁ。それにしても、は、初めてだぞ?こんな上等な布団で寝るのは。
「大丈夫かな。」
そろりと足を入れてみる。だ、大丈夫そうだ。
「ちょっと、イジワルだったな。」
さっきのことを思い返した。千歳が帰ってきたら、話してやるか…。
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