月の輪
「僕の名前は、檜。君の夫の遠い遠い先祖だよ。」
「榊の?」
黒髪で目も黒いのに?
「あ~、信じてないねぇ。」
「えっいや、その!」
「これでどう?」
「きゃっ。」
真っ黒な翼に巨大な一本角…。
「妖…。」
「うん。妖。」
でも、何故?
「僕らはね、このしきたりを始めた二人なんだよ。彼女は千尋っていうんだ。」
知ってる。千尋様は素晴らしい巫女様であったと記録されていた。
「千尋は美人さんなんだけど、此処だけの話、すごーく気が強くって、負けず嫌いっていうか勝ち気なんだ。」
「はぁ…。」
「僕が来た時も、堂々としてたよ。」
「はぁ…。」
「ああ、話がズレたね。ごめんよ。
御影の人達の反対を押しきって千尋は妖界に来た。最初は疎まれたけど、慣れたら皆が羨ましがって、自分もって人間界に行って、争った。御影の人間を手に入れる為に。」
「!!」
「それ程、御影の力は強くて、魅力的だった。因みに、千尋は先読の力と結界を結ぶ力を持っていたよ。」


「と、言う訳で、人間界で妖が暴れるからのぅ。仕方なく、掟を作る事にしたのじゃ。」
「その掟が、今のしきたりって訳か。」
「そうじゃ。しかし、あくまでもこの掟は、両方の意志の合致が前提じゃ。」
「…。何が言いたい。」
「わかっておろう?」
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