クマさん、クマさん。
「ふーん。つーかさ、まだ俺たち中3だぞ?夢なんてまだ理想だろ」
理想か・・・。
「そうだよな」
「そうだよ」
アカヤは俺のノートを写すことに専念したのかそれからは一言も喋らなかった。
"夢"なんてまだ理想か・・・。
俺の夢は通訳する人だ。
相手と相手の言葉を伝える橋になりたい、小学生の時からの夢だった。
T高・・・進路で外国に行ける県唯一の高校。
それに俺は行くか行かないか迷っていた。
T高に行けば外国に行って通訳の勉強ができる。
でも、T高に行けばきっとあの子と離れてしまう。
"夢"を取るか、"好きな人"を取るか俺は決められないでいた。
きっとT高に行けたら外国に行けて英語能力が高まり、夢に近づける。
けど、あの子とはもう連絡は取れなくて失恋。
でも、あの子と一緒の高校に行けば、あの子と付き合える可能性は高い。
けど、夢が叶えられる確率が低くなる。
どうすればいいんだ・・・?
「クマさん」
落ち着いた、少し高い声で呼ばれた。
「なに?なっちゃん」
俺を呼んだのは俺の好きな人のなっちゃんだ。