甘いキスの魔法






「……何か緩いね。」







お昼休み、机を向かい合う形にして唯と話してたときに言われた言葉。







「え。……なに…が?」







食べ終わったあたしは鼻歌をうたいながら頬杖をつく。










「………梨音の顔。」








そういいながら唯はあたしの頬を引っ張った。






え、うそ。


そんなに緩かった……かな?








「鼻歌まで歌ってるし…
 何か……あった?」






―――――――ドキッ






唯、鋭過ぎる……






「なんで?」








「とてもじゃないけど、昨日フラれた人には見えないから。」







唯があたしをじっと見つめる。







ゔ…





いまはまだやっぱり、心が痛む。







不意に近くにいた種村くんと目が合って、ぱっとそらされた。








「ま、今はまだいーけど
 ……そのうち教えてよ?」






…………優しい、唯。







唯のことばに大きく頷いた。













「―――天野さん、いる?」
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