甘いキスの魔法
「てか天野、ゆたかと別れたんだって?」
“ゆたか”は種村くん。
「なんでそれ…っ」
「有名だよ。天野モテるから。」
音楽の教科書をぱらぱらっとめくりながら準ちゃんは言う。
なんで…皆……知ってるの?
「あ、悪い!…ごめん!」
「…え?」
「…………涙、出てる。」
準ちゃんの手が、こっちに伸びてきそうになって、引っ込んだ。
「ほんとにごめん、な。」
準ちゃんがあまりにも申し訳なさそうに言うから、なんだか笑ってしまった。
「泣いてんの?笑ってんの?どっちだよ。」
そんなこといいながらまた、笑った。
種村くんのはまだ名前聞くだけで辛いけど、心配してくれる人もいるんだ。
…だから、あたしも強くならなきゃいけない。