甘いキスの魔法
★輝side
「……行ってきます」
ちょっと早めに家を出る。
はあ、と息を吐くと寒いから、息が白くなる。
その吐息がさらに寒さを増して、ぶるっと身体が震える。
ゆっくりしていた足の速度を無意識にはやめて、ブレザーのポケットに手を突っ込む。
予定より早く学校に着いて、下駄箱のところでよっ掛かりながら待つ。
すると一人の男が入ってきて、ロッカーの扉を開け、何かを入れた。
ラブレターかなんかかな、とたいして気にとめずそのまま梨音を待ち続ける。
それにしても寒くて、マフラーに顔を埋めずにはいられない。
そして、あまり人がいなかった玄関はしばらくして、すぐに人が沢山来た。
その沢山の人の中に梨音がいた。
「………はよ」
と声をかけると梨音はびっくりした顔で俺を見た。