甘いキスの魔法
「………梨音?」
そっと、目を開け心配そうに梨音の顔を覗き込もうとしたら、ぽつりと円くブレザーに染みが出来る。
「…っと、ごめん、触って。」
梨音を抱きしめてたままだった、と言うことに気付き、慌ててそういいながら梨音から離れようとすると、ブレザーの袖をぎゅっと掴まれた。
「……梨音?
やっぱどっか痛いとこあった?」
梨音に袖をつかまれたまま聞くと、梨音はふるふると俺の胸の中で顔を横に振った。
「ちが…い…ます…っ
……っ、ただ…」
そう梨音が言いかけ、顔をあげる。
顔をあげた梨音は俺の顔を見て、不安そうに瞳を揺らす。
「…ん?」
なにか言いたげな梨音に顔を傾ければ。
「先輩に怪我させちゃったから…」
そういって、梨音の目から再び涙が溢れ出した。