甘いキスの魔法
「……………!!」
梨音が顔を真っ赤に染める。
そのあとに、何が起きたのかとでも言うように目をぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「……また、倒れんなよ?」
梨音の反応を見て、またクスクスと笑いながら冗談を混じりつつ言い立ち上がろうとする。
「……………っ…!」
ズキンと、さっきの背中が痛み出した。
慌てて座り直す。
「宮崎先輩…?」
さっきまで顔を赤くしていた梨音が心配そうに顔を歪めながら俺に近付いた。
「…なんもねーよ。
ほら、梨音はやく行かねーと。」
ドアの近くに掛かっていた時計を指差す。
「…でも…先輩が…」
「俺は全然平気。…ほら。」
そういいながら無理に立ち上がり、元気そうに動く。
その動作に比例して痛みが酷くなる。
ほんとは…立っているだけで精一杯だ。
冬だと言うのに、汗が出るくらい。
倉庫の中は明かりがあるけど、そこまで明るくないから、多分見えてないはず。
「本当に大丈夫ですか?」
そう言い、梨音が俺に手を伸ばしながら近付いた。