甘いキスの魔法
ばっと反射的に梨音の手を避けようと後ろに下がろうとすると、いきなりクラッと目眩がしてくる。
立ち直して、壁によっ掛かった。
「…先輩…?」
避けられたのが悲しかったのか少しだけ遠慮がちに俺を呼ぶ。
「ほら、もう部活始まるよ。」
時計に意識をいかせれば、ほんとだ、と言い少しだけ困った仕草を見せる梨音。
「俺はサッカーボール探さなきゃいけねーから、大丈夫。」
笑顔でそう言えば梨音はようやく折れてくれたのか
「…わかりました。
すみません、ありがとうございます。」
と言って頭を下げて去って行った。
梨音がほんとにいなくなったかを確認して、俺は座った。
………………ほんと困ったな。
そう思いながら、少しずつ意識が薄れていって、突然プツリと何かの糸が切れたように意識がなくなった。