甘いキスの魔法
「ご、ごめんなさい…っ」
ひょこっとどこからか現れた梨音だった。
あ、変なとこ……見られた。
「……なんで?」
そういって、梨音に手を伸ばす。
一瞬、ぴくっと肩が上がったのを俺は見逃さなかった。
「その、やっぱ申し訳なくて…」
俯きながら言った梨音の頭を撫でるように触れる。
梨音の髪の毛は冷たくて。
きっと、ずっとここで待っていたのだろう。
べつに、俺が梨音を守りたかっただけだから全然心配しなくて良いのに。
そう思ったけど、梨音があまりにも可愛くて。また、いじめたくなってしまう。
「ふーん?じゃあ、お礼にキスしてよ」
「…な!む、むむ無理です。元気そうなら帰ります。」
そういって梨音が歩き出そうとした瞬間――…
「…馬鹿!」
入って来た車に衝突しそうになって慌てて梨音の手を掴んで、引っ張れば、
そのままさっき梨音が歩き出しそうになってた所を過ぎていった。