甘いキスの魔法
「お姉ちゃん、手繋いでいい?」
「ん?今あたしと繋いでるよ?」
確かに今あたしと優の手は繋がっている、はずなのに。
「お兄ちゃんも一緒に!ぼくが真ん中がいいな、」
そういうことか、と納得するものの宮崎先輩が良いって言ってくれるか……「いいよ、はい。」
ん?と思い見れば既にもう、優と先輩の手は繋がれていた。
優が最初からこんなに、出会ったばかりの人に甘えるのは初めてだった。
……あたしと、優と、宮崎先輩。
三人で手を繋ぎ、優の歌を聞きながら歩いた。
それがあまりにも懐かしいような感覚だったから、急に胸がちくりと痛んだ。
……あぁ、思い出した。
あたしも昔、お父さんが生きていたころ、こうやってお母さんとお父さんと二人の間で笑い合ってた。
今ではもう、思い出としかならないお父さんの存在は、まだあたしを、記憶の中に迷わせていた。