加害者は俺、被害者は私。

「気持ちいいなぁ〜」

屋上には、爽やかな風が吹いていた。
秋頼先生は、隣で大きく伸びた。

「あの…先生、私…最近お母さんがおかしいと思うんです」

この私の一言にピクッと反応し、先生は顔色を変えた。

「翠がっ?!」

へ…?
何で先生が、お母さんの下の名前呼んでるんだろう?

私のお母さんは、八乙女 翠(ヤオトメ スイ)
翡翠(ヒスイ)っていう石からとった名前。
だから私も琥珀(コハク)っていう石からとって、珀。

…知っていた名前なのかもしれないけど、これは親しい人しか呼ばないはず。

「…あ…」

今更『しまった』というような顔をする先生。

……怪しい。

お母さんを何故、下の名前で呼んでいるのかを確かめよう。



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