あいたかった青と白

the sea


次の土曜に約束どおり琢海の家へ遊びに行った。




美香は琢海の部屋に入るなり、テラスからの海の眺めを見に行く。





風が心地よかった。海から流れ込んでくるこの湿った風が美香の忌々しい日常生活を全て綺麗に吹き飛ばしてくれるような気持ちになる。





「いいとこでしょ。」




美香の隣で琢海が話しかけてきた。





「でも家賃はそんなに高くないから、ほんとここをみつけられたのはラッキーだったよ。」





テラスの手すりにひじを下ろして、琢海は得意げに言った。





「琢海はここで一人暮らしをしてどれくらいたつの?」





「俺は大学に通うために上京してきて、今大学4年生だから4年目だね。デザイナーの勉強をしにこの大学へきたんだ。」





「琢海なら絶対かっこいいデザイナーになれるよ。私あの海の絵が大好きだもん。」





美香は初めてあの絵を見たときのことを思い出していた。




深い青の絵の具で美しく塗り上げた琢海が描いた青の世界は、美香の心にすうっと溶け込むような気がした。





青だけではない。




琢海のとなりにいる美香の視界は全てカラフルに満ちていた。





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