桜舞う木の下で

記憶*゚



「先生…」


―ガラッ


その時、集中治療室のドアが開いて担当していた看護婦さんとお医者さんが出てきた。


「俺が行く」


瀬川先生が私達の代わりに話を聞きに行ってくれた。


「…意識戻ったとか?」
「うん…」


愛ちゃんと話をしてると、話がすべて終わったらしくお医者さんと看護婦さんは立ち去っていった。


「先生…?」
「ん…意識は戻ったけど…」
「けど?」
「記憶は残ってないみたい…」


先生…好きって言ったことも10年経ったら迎えに来ることも全部忘れちゃったの?


「麻衣…」
「…全部ないの?」


瀬川先生はゆっくりうなずいた。
後悔したんだ…
もっと好きって言ってれば、あの時付き合ってってお願いしてればって。
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