恋愛倶楽部 -love-
ケンカは強いほうだけど、やっぱり男相手はキツい。
再び立ち上がろうと、地面に手を着いた瞬間───
ゴンッと鈍い音が響く。
「くっ」
目の前のケンは頭を押さえてどこかを見ていて。
さっきの鈍い音は、彼にボールが命中した音だったらしい。
動きをなくしたバスケットボールが、あたしの横でただ存在感を醸し出していた。
………ん?え?
バスケットボール?
なんで?
疑問ばかりが浮かぶ中、次に耳に届いたのは大きな声。
「先生ー、こっちっす不審者ー!」
数メートル先で誰かが叫んでくれている。
「チッ」
おかげでケンは舌打ちと恐ろしい睨みを残して車の中へ。
その後すぐに真っ赤な車は走り去り、ぽつんと独り立ち上がれていない自分。
まるで嵐だ。
嵐が来たみたいだ。
現実か夢かも怪しすぎる短時間に起こった出来事。
現実だと証明するのは、想定外の擦り傷だけ。
これも個人の不注意で、と言われれば証拠すらなくなりそうだけど。
それから、座ったまま横に静止したバスケットボールを手に取った。